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全国ハンセン病弁護団協議会の「日本からの報告」として、韓国の国家人権委員会に報告した遺族・非入所者問題の訴訟和解の内容!

 投稿者:滝尾 英二(TAKIO EIJメール  投稿日:2006年11月19日(日)12時52分1秒
  通報 編集済
   【検討資料、2006年11月19日=滝尾英二】

 2025年7月12日に、韓国の国家人権委員会に対して行った「全国ハンセン病弁護団協議会」からの「日本からの報告~ハンセン病問題解決の為の取り組み~」(2005年06月20日)のうち、「5 遺族・非入所者問題の訴訟和解」の項目の内容です。昨年(=2005年)7月現在、全国ハンセン病弁護団協議会が、「非入所者の遺族・家族の被害問題の解決の為の取り組みが、なされていない状況がわかります。

 参考までに【討議資料】として、『滝尾英二的こころ』の掲示板 ★非入所者、家族・遺族の問題を考えるために★ のところに掲載しておきます。

               人権図書館・広島青青丘文庫  主宰 滝尾英二

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 下記資料は、2025年7月12日に韓国の国家人権委員会に対して行った「全国ハンセン病弁護団協議会」が、「日本からの報告~ハンセン病問題解決の為の取り組み~」(2005年06月20日)として行なった「5 遺族・非入所者問題の訴訟和解」の項目の内容です。(滝尾)



5 遺族・非入所者問題の訴訟和解

(1) 入所歴なき原告との和解

 ① 「入所歴なき原告」とは、らい予防法が廃止された1996(平成8)年4月1日までに、ハンセン病を発症したが、療養所に収容されることなく社会内生活を送っていた者で訴訟の原告となった者である。

 ② 熊本地裁判決の対象となった原告は、いずれも療養所在園者もしくは入所経験者(退所者)であり、入所歴のない者は判決対象者には含まれていなかった。しかし、隔離政策の被害者は療養所への入所経験を有するハンセン病患者、元患者に限られない。

 入所歴なき原告は、社会内での生活を続けているが故に、むしろ療養所に収容された者よりも社会の偏見差別を激しく受けてきたといえる。
 たとえば、ハンセン病であることが周囲に知られ、本人のみならず家族までもが地域社会から排除されたり、厳しい偏見差別を恐れるために、辺鄙な場所に一人で小屋を立てて生活する、自宅に閉じこもったまま人前には出ないように暮らす等、地域社会における生活基盤そのものを失っていた。

 また、隔離政策は、ハンセン病の治療を療養所のみに限定した結果、入所暦なき原告らは、医療を受ける機会を奪われ、重篤な後遺症を遺したり、誤診による不必要な身体侵襲を受けるといった医療上の被害を被っていた。

 ③ 熊本地裁判決は、判決書の理由中で「療養所に隔離収容されたことによる被害」(隔離被害)のみならず、「隔離政策が予防法の存在とあいまって作出・助長したハンセン病に対する誤った認識(偏見)により、ハンセン病患者が様々な差別的処遇を受ける地位におかれたことによる被害」(スティグマ被害)を併せて共通被害と認定し、これにより「地域社会において平穏な生活を営む権利を侵害された」と指摘している。

従って、熊本判決の考え方からすれば、入所歴のない原告も、入所歴のある原告らと同様に、隔離政策の被害者として救済されなければならないことは明らかであった。

 ④ そこで、原告弁護団は国に対し、入所歴なき原告に対する賠償金(和解金)の支払を求めたが、2001(平成13)年6月23日に、全国原告団協議会と厚生労働省との間で成立した基本合意では、入所歴なき原告についての賠償金(和解金)の支払については、合意に至らず、今後の協議課題とされるにとどまった。

 そこで、原告弁護団は、国に対し、入所歴なき原告に対する和解金の支払を求めて交渉したが、国は協議の席につくことすら拒否したため、熊本地方裁判所において、再度判決を求めて立証活動を進め、入所歴なき原告の証人尋問等を行い、入所歴なき原告らの被害の実像を明らかにした。

 ⑤ これを受けて、2001(平成13)年12月7日、熊本地方裁判所は、入所歴なき原告についての被害を認定し、発症時期に応じた和解一時金の基準額を示して、和解解決を勧告した。

 原告弁護団はただちに裁判所の和解所見に応じる旨の回答を行なったが、国は和解協議に応じることに難色を示した。

 その後、熊本地裁は3度和解所見を示して和解を勧告、原告弁護団も各方面に働きかけて交渉を重ね、その結果、2002(平成14)年1月28日、全国原告団協議会と厚生労働省との間で、入所歴なき原告に対する謝罪と和解一時金の支払いを確認した基本合意が成立するにいたった。
 そして、この基本合意に基づき、順次入歴なき原告と国との間で和解が成立し、和解金が支払われている。


(2) 遺族原告との和解

 ① 「遺族原告」とは、提訴前に死亡した療養所在園者もしくは入所経験者(退所者)の法定相続人である。

 ② 隔離政策の被害者である本人が、提訴前に死亡したとしても、死亡する前に発生していた損害賠償請求権は、相続法の考え方に従えば、当然、その法定相続人に、法定相続分に応じて相続承継されるはずであり、遺族原告は、本人の請求権の承継者として国に対する賠償請求権を有する。

 ③ しかるに、2001(平成13)年6月23日に、全国原告団協議会と厚生労働省との間で成立した基本合意では、遺族原告の問題は入所歴なき原告と同様、今後の協議課題とされるに止まった。その後の交渉でも、国は和解拒否の姿勢に固執し、容易に解決には至らなかった。

 ④ そこで、原告弁護団は、入所歴なき原告らとともに、判決を求めて立証活動に入った。その結果、裁判所において、遺族原告については死亡時期に応じた和解一時金の基準額を具体的に示した和解所見と和解勧告が出された。これを基に、遺族原告に対する賠償金の支払いを求めて交渉を重ね、遺族についても先の平成14年1月28日の基本合意において、和解により賠償金(和解金)を支払うことが確認された。
 その後、多くの遺族がこの基本合意に基づき、遺族として和解金を受領している。

 ⑤ 遺族原告への賠償金の支払いは、法的には相続法理に基づくものであり、遺族の被害そのものが問題となったわけではない。しかし、遺族はハンセン病者の家族として、直接に、あるいは間接に、居住、職業、結婚の差別、学校や地域でのいじめ等を受け、家族が療養所にいることを隠し続けながら生活するなど、大きな被害を受けている。特に、親を療養所に奪われた子らは、ある者は親の入所に伴い、園内の保育所等に入れられ、ある者は親戚に育てられ、その中には親の戸籍に入れられない者もあった。そうした家族の被害に対しては、いまだ国の謝罪はなく、多くの家族がハンセン病のことを隠して暮らしているために、その被害実態すら明らかになったとは言えない。現在、弁護団では家族の被害実態を明らかにする作業に着手している。

 ⑥ なお、在日韓国人で日本国内の療養所に入所していた者の遺族も、同様に損害賠償請求権を相続したとして和解の対象となっている。こうした遺族の中には韓国籍の者、韓国在住の者も含まれている。ただ、近時になり、国は突然に国家賠償法施行(1947年)以前のみの入所者の遺族について、国家無答責を理由に、和解を拒否する意向を示している。この理由により和解を拒否されている遺族の中には、韓国籍・韓国在住の者が含まれており、この問題の解決が今後の課題となっている。

                            (以下、省略=滝尾)。
 
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